人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「傾山とアケボノツツジ」(1)

 早朝5時過ぎの大分自動車道、車内には5・60‘年代のアメリカンポップスが流れ、軽快な走りに乗ってリズムがテンポアップしていく。そして、フロントグラスを透して見える黎明の双耳峰、そのシルエットがくっきりと空に浮かび何かしら神秘的である。古の人達はここに神を崇め霊峰として五穀豊穣を願っていたのかも知れない。 カメラに収めたいが、高速度道路は停車禁止である。また、今日は助手席にSDも座っていない。
「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_1651791.jpg

紅葉の時期、SDと二人で尾平登山口から祖母山を周回した折に湯布院ICを利用したので、今回もナビに従わず同じICで下りて210号線から442号線を通って鄙路の7号線を走る。山開きにしては車の通りが少ない。

「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_1544596.jpg 6時半頃、豊栄鉱山跡の駐車場へと左折する時、一旦停止して標識にカメラを向けていると、後ろから突然車が横付けされる。左折を妨害するように停まっていたので申し訳ないと思い、謝る為に横の車を覗くと、色白の妙齢の奥さんが助手席に乗っている。
そして、運転していたのは由布岳で30分ほど立ち話をした尾畠さんである。顔を記憶に残すのが不得手な私であるが、流石に野性味あふれる顔に笑顔の可愛い彼の顔は忘れ難い。

「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_1556161.jpg「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_818387.jpg
 材料から全て無償で由布岳の保全に尽力している彼について、先月の「野焼き後の由布岳」でも紹介しているが、正に尽きない話題の持ち主である。
一線を離れた後、野宿しながら90日で鹿児島県佐多岬から北海道宗谷岬までを歩いたこと、また東北大震災のボランティアでは思い出のアルバムを持ち主に返す仕事の中心的役割を果たした彼である。

「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_1635094.jpg勿論、登山についても限りない話題の持ち主である。

「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_15594050.jpg

 傾山を庭のように歩き俯瞰的に見ることのできる彼に先を譲って、一段と狭隘になる道を付いて行く。早朝にもかかわらず鉱山跡の駐車場は満杯で、一段低くなった河川敷のような場所に留める。
車から下りて直ぐに彼のもとへ行って、挨拶がてら山行の同行をお願いすると、連れが居るにも拘わらず笑顔で快諾してくれ、例の分厚い掌と強い握力で握手してきた。お連れの方は奥さんではなく、私と同じように彼の由布岳ボランティアに甚く感心して、今日の“傾山の山開き”に同行をお願いされた方であった。

「傾山とアケボノツツジ」(1)_f0201348_1685150.jpg 6時40分、セメント舗装の山路にゆっくりと足を踏み入れて行く。
期待に違わぬように渓流の対岸には藤の紫が今朝の青空のように麗しく、滾滾としてごろ岩を縫うように流れる水の軌跡が美しい。
 一人歩きと思っていた私は、九折越コースを上がって坊主尾根コースを下る積りでいたが、彼等も山開きの”神事”の後、山頂から同じコースを下ると言う。
 鉱山から流れ出る水の解毒処理するための貯水タンクの横を通り、青く塗られた鉄橋を過ぎて間もなくすると、直進する坊主尾根コースを右への指導標が立っている。
by 1944tourist2004jp | 2012-04-30 16:34 | 山登り


<< 「傾山とアケボノツツジ」(2) 「オキナグサ」(3) >>