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「昔懐かしい田園風景」

 “中秋の名月”。
盛況裏に終わった校区の「お月見会」。800人超の参加者に 、“協働のまちづくり”の青少年育成部会事務局の皆さん方も準備を含め3時間の奮闘でお疲れになったことだろう。
翌日、我が家でも寂しく翳んだ満月を見ながら、甘さたっぷりの小豆餡が乗った団子が5個、白い皿に盛られた。
 電機やガス灯の無い闇夜の時代、紫式部や清少納言の観た満天の星空と月明かりは、言葉を失うほどに見惚れるばかりであったろう。しかし、彼女達は多次元的な感性で表現している。
今、満天の観月は奥深い山にしかない。
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                      (平成22年9月の黒米収穫写真)                 「昔懐かしい田園風景」_f0201348_8141893.jpg

 そして、正に太陰暦を偲ばせる仲秋名月とコメの収穫。

 菜園仲間から2週ほど遅れて、冬野菜栽培の畦を仕上げるために9時半から農作業に出かける。
近傍の稲刈りを待って、12mほどの二畦に積んでいた枯草を燃やし、初志を忘れず全て手作業で土を起し、土壌を砕く。


「昔懐かしい田園風景」_f0201348_14183781.jpg 二人で一畦を完了した頃、稲刈りの済んだ1反ほどの圃場を挟んだ向こうで、曇り空を見上げながら6・7人の男女が稲刈りの作業に入る。
遠目に見ていると、稲刈機が動き出す中、数人で3mほどの丸太を三角錐に組んで、その上に孟宗竹を渡していく。そして、残った人達は刈り取った稲を二股にして手際よく掛けていく。
その昔懐かしい田園の原風景を写真に収めようと、「最近では珍しい稲刈りの風景なので撮らせて貰っても宜しいでしょうか」とお願いすると、「いいですよ!」との笑顔が返ってくる。
 傍でお昼の準備をしていた奥さんに聞くと、「大人7人で昼過ぎまでに1反8畝ほどの作業をします」とのことであった。
この圃場は3年前に黒米を栽培していたので、「特別栽培米なんでしょうか」と訊ねると、「特別と言うことではなく、無肥料・無農薬、無除草剤で天日です」と、驚きの返答であった。反収を聞くと6・7俵程度とのことであった。
“三無い栽培”でお金を掛けないので採算はどうにか取れますとのことであった。

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 一仕事終えて帰る途中でご主人に栽培方法等を色々と聞く機会があったが、品種は食味があっさりとして、糖分の少ない“ササニシキ”で、病院やレストランに卸しているとのことであった。
同じ方法で8反ほど野菜を栽培していると知って、課題の自然農法について聞くと、要点は「天地返しはせず精々30cmほど掘り返し、土壌に栄養と空気を存分に入れ混むため雑草や稲藁を漉き込んで、過剰な浸水による土壌の腐敗させないこと」と、決して自信過剰や押しつけの無い返事に、彼の数多の経験を感じる。
採算はいざ知らず、自然農法でコメや野菜を栽培し自家消化と病院や特別な所に売っていますとのことであった。

「昔懐かしい田園風景」_f0201348_14242084.jpg 彼等の農作業を見ながら、未だコミュニティーに浸透し得ていない“協働のまちづくり”について思いを馳せる。
 科学技術の進歩により生産性は格段に上がったが、その便利さと豊かさを享受することによって生まれた集落意識の希薄化、事象の表裏に世の常を感じる。

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農耕民族の根幹である協働作業が消滅するに従い互助の精神も薄れ、他人に無関心でぎすぎすとした社会が滲み寄る。
彼等の農作業に、協働のまちづくりの原点であるコミュニティーが共有できる活動の場を創出すべきヒントが隠されているのかも知れない。
by 1944tourist2004jp | 2015-10-01 13:55 | 雑感


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